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2015年10月 4日 (日)

文集の原稿 つづき

 

私達が暮らす兵舎の海側は高い塀で遮られていました、

  

 そこには人間魚雷「回天」の基地がありました。

 

 特攻出撃するのは前の晩にわかりました、 

 

塀を貫いて響いてくる大声や物を壊す音、 

 今生の別れを惜しみ、酒宴で爆発させているのが痛ましく想像できました。
 

翌朝、塀の切れ目から見送りました。 

潜水艦が、弾頭を真っ赤に塗った「回天」を積み出港します、 

 「回天」の脇に立ち、いつまでも敬礼した手を下さず去って行った特攻隊員の姿は、

七十年たっても忘れられるものではありません。 

 

 7月になると、訓練そっちのけで裏山にトンネルを掘り、本土決戦に備えるのが日課となりました。 

 休憩は松林に身を隠し、箱庭より美しい瀬戸内の海を眺め、のどかな気分に浸りました、 

 でもそれは、ほんのひと時です。 

 制空権を奪われた日本の空を飛ぶのは敵機ばかりです。   

 島影から何機もグラマン艦上戦闘機が現れ、つばめのように飛び回ります、 

 獲物を見つけたら容赦なく機銃掃射を浴びせました。 

 兵舎へ帰る道端に遺体が幾つも転がっていました、 

 人間の身体と判別できないほど酷い傷つきかたでした。 

 私達は黙々と横を通り過ぎました。 

 今になって怖ろしいのは、 

 その時の私が、 

 遺体を目にして『何も感じなかった!』ことです。 

 戦争は「人」を「人でなし」にする舞台だと思います。               つづく

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