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2007年5月30日 (水)

芸術性と商業性

 マイブログの5月29日の記事「ケアノート」の主人公河瀬直美監督の「殯の森」が、カンヌ映画祭でグランプリを獲得したと言うニュースが伝わってから見たくてならなかった。

 ところが、昨夜、NHK・BShiで放映された。ハイビジョンテレビを買っておいて良かったと、これほど満足したことはない。

 先ず、受賞のポイントになったといわれる映像の美しさは目を見張るばかりだった。風にそよぐ稲穂、刈り込まれた茶畑、雑木の茂った森、とに角緑が美しかった。

 表彰式で河瀬監督は「人間は形あるものによりどころを求めようとしても一部しか満たされない。誰かの思い、光、風、死者の面影などに、心の支えを見つけた時、たった一人でもたっていられる」とコメントしたそうだが、重いテーマの映画だ。

 TVで放映された「スパイダーマン」とか「パイレーツ オブ カリビアン」など、単純で解り易くよく売れて人を驚かす映画を見た後では、河瀬監督の映画は入り込むのに時間がかかる。しかし、入ってしまうと読書と同じで、自分の想いが刺激され活動し、監督の主張から脱線するかもしれないが自分の想像を働かせて筋を追っている。やはり、新鮮だった。

 主演男優はアマチュア、女優も無名に近く、老人ホームの人達は恐らくエキストラでなく実際の入所者と思われる。場面は奈良県の山村から外に出ず、いわば日常を切って取ったような作品。(内容的には非日常ともいえるが・・)映画のもつ芸術性だけで勝負した作品だから、栄誉をかち得たのだろう。

 6月になってから、劇場公開されるそうだが、カンヌ映画祭受賞作の宣伝で観客動員は望めるものの、商業的に成功するかどうかは分からない。

 監督は、観客動員数を増やしたいと願っていても、商業的な大成功は計算していないだろう。作品にそんな味付けをしたいという気配がない。

 日本映画で、芸術性と商業性を兼ね備えたと、感心した映画がある、「父と暮らせば」「阿弥陀堂だより」両方とも忘れ得ぬ作品だ。監督が芸術性を貫き、名優が見事な演技で商業的な成功に貢献しているように思えた。

 映画を娯楽としか見ない視野の狭さを広げてもらった夜になった。

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コメント

我が夫、「殯の森」を見んならんと早々にご帰還でした。しきりに「BS,BS」とのたまうがテレビ欄を探しても書いてない。そこではたと気がついてハイビジョンのコーナーを見ますとありました。それは我が家では見られないと何度言っても聞き入れず仕方がないので入力切り替えし、チャンネルを一つ一つ見せて私の「でしょ?」に、夫「ふーん、そうなんか・・・」とやっと納得。ちなみに夫は電気関係の仕事なのですがねえ。

 我が家にDVDレコーダーが2台もありますが、珍しモン好きやから、早ゃ~くに買ってしまって、両方ともデジタルBSのチュ-ナーがついてません。ということは、録画できませんでした。録画してたら、直ぐ宅配したのに・・・・。音響を多チャンネルにしたら、映画館並になります。メチャメチャ綺麗ですよ!

昨夜の「殯の森」観ていました。ほんとうに綺麗な映像ですね。稲穂をサワサワと撫でて走り来る風。もうこれだけで何かが在る、何かが始まる、何かが起きていると思わさせられました。翡翠を想わせるあの緑は普通の映像の色ではないですよね、引き込まれるミドリでした。殯という珍しい漢字で意味がよく分らなかったのですが、なるほどそういうことかと知らされました。台詞らしい台詞はほとんど無く映像とその表情にグイグイと引きずり込まれたのですが認知症の主人公の「私は生きていますか?」の一言がグサリと刺さりました。それにしても深渕の耐え難い悲しみです。あの西瓜畑も熊笹覆う獣道も此岸と彼岸の狭間としかぼくには見えませんでした。
前回の「ある死」での「侏儒の言葉」から今回の喪あがりの話とかなり重いテーマではありますが真摯に読ませてもらいました。
先生、昨夜のその映画の3時間ほど後、深夜放送でキューブリックの「突撃」を放映していましたね。こちらは「なぜ死ななくてはならないのか」という戦場での不条理な死の話でした。モノクロも好い色に感じることがありますがこの作品もその部類でした。

キューブリックの「突撃」は見ていません。過去に見たことがあるのでは?と調べてみましたが、やはり知らない作品でした。キューブリックは鬼才ですね。2001年宇宙の旅や時計仕掛けのオレンジやフルメタルジャケットを見た時のショックは決して忘れられません。「突撃」も、レンタルで見ることにします。

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